ワクチンに期待されるベネフィットと副反応のリスク

監修:川崎医科大学 小児科学 教授 中野 貴司 先生

予防接種とは、病原性を弱めたり活性をなくしたウイルスや細菌、毒素を、あらかじめ体に接種して免疫をつけておくことにより、感染症の原因となる病原体に罹らない、罹っても重症化しないようにすることであり、そのために使用する薬剤をワクチンと言います。
予防接種の目的としては、①個人を守る(個人防衛)、②流行を抑え集団や社会を守る(社会防衛)、③予防接種を受けていない(受けられない)人を守る、④次世代の健康を守る、⑤感染症の根絶・排除、の5つが挙げられます。すなわち、予防接種は我が国の公衆衛生に重要な役割を担っており、この5つの目的はそのまま予防接種のメリットと言い換えることもできます。

通常、治療薬は何らかの疾病を患った際に使用するのに対し、ワクチンはできるだけ健康な時に接種することが望まれるという特徴があります。健康な方に使用する医薬品であるという特性から、ワクチンは治療薬以上に高い安全性が求められる傾向にあります。
ワクチンを接種した後、好ましくない体調不良が認められることがあり「有害事象」と呼ばれます。この有害事象のうち、ワクチンとの因果関係が否定できないものが「副反応」と呼ばれます。ワクチンは免疫をつける医薬品であり、副反応をゼロにすることはできません。国内では、ワクチンを接種した後の有害事象が、副反応疑い報告として厚生労働省に報告されています。それらは厚生科学審議会で議論され、定期的に安全性がモニタリングされています。また、健康被害が発生した場合の救済についても、定期接種では「予防接種後健康被害救済制度」、任意接種では「医薬品副作用被害救済制度」が定められています。

ワクチンを接種するより、自然に感染したほうが、確実な免疫がつくからいいのではという考えもあります。しかし、自然に感染症にかかることは、合併症 (肺炎や脳炎など)による重症化のリスクのみならず、周りの人に感染を広げてしまうこともあります。そのようなことを防ぐという観点からも、ワクチンを接種することには意義があります。

以上のように、ワクチンを接種することは感染症から個人を守る、そして社会を守っていくという重要な目的とメリットがある一方で、どうしてもゼロにできない副反応のデメリットがあります。予防接種を受けるにあたっては、接種することによるベネフィットとリスクを正しく理解しましょう。

最近では、インターネットやSNSの普及により、時には正しい情報の判断が難しくなってきています。
迷ったときや判断できないときは、かかりつけの医療機関や、自治体などに相談してみましょう。

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